インフラ屋がシングルモードファイバを扱うときに知っておくといいこと

東京はだいぶ暖かくなりましたね。
ぼちぼち試される大地で試用される期間も3か月が過ぎ、春の到来とともに終了を迎え全力モードです。
(普通に東京勤務ですけど)

前回のWDMネタでもさらっと書きましたが、建屋間の接続は距離が長く、マルチモードファイバ(MMF)での接続は伝送損失が多すぎて不向きです。
必然的にシングルモードファイバ(SMF)になりますが、自分は今までSMFを扱った経験はベンダに言われた通りの構成で購入して、電話しながら言われた通りに接続したことしかありませんでした。
今回は自社の設備 + 自分が設計をする必要があったため、構成への不安と知識不足を感じて軽く学習しなおしました。
(物理的につなげるためだけにコネクタの形状と芯のサイズくらいしか調べた事がなかった)

SMFはMMFより扱いが難しかったり、種類が多かったり複雑ですが、要点さえ押さえてしまえばMMFとさほど変わりません。
ずらずらと書いていくのでさくっと覚えて帰って(?)いただければと思います。
※初心者のチラ裏なので間違ってるかもしれません!

出力されるレーザーは不可視で高出力
まずは安全性にかかわる重要なことです。
初期の通信用ファイバで利用されていた波長は可視光帯が利用されていました。
今でもその印象を漠然と持っている方もいると思いますが、可視光での通信は伝送損失が大きすぎるため、現在では通信用には使われていません。
波長の特性や利便性から可視光より波長が長い赤外線が利用されています。
日暮れに赤が遠くまで伝送されて夕焼けになるように、さらに長い波長の赤外線はより遠くに伝送されます。

赤外線は人間の目では見えないため、リンクアップしないからといってうっかりのぞき込むと高出力の赤外線レーザーにより眼に深刻なダメージを負うことがあります。
数百メートル~数キロのトランシーバはクラス1相当の出力が大半なため、人体に破壊的な影響を与えるものはほぼないと思いますが、扱いには気を付けましょう。
人に向けたりもしちゃだめですよ。

トランシーバモジュールの選び方
SMFで利用できる波長は技術改善により徐々に拡張されてきました。
現在では1260nmから1625nmまでが定義されています。
それぞれ利用開始時期によりバンドとして区別されています。詳細はぐぐるとすぐ出てきます。
波長が長いほど遠くまで届きやすい性質を持ちますが、その分高性能なトランシーバが必要になり価格があがります。
価格と必要とされる伝送距離のバランスで適度なモジュールを選択します。

以下は具体的な例です。

今回の自分の要件はSMF OS2ファイバで300メートルの伝送でした。
一般的にOS2ファイバの伝送損失は0.2dBm/km ~ 0.4dBm/kmくらいです。
途中パッチパネルを三か所挟むので中継の損失を多めに見て1dBm x3とします。
パッチやファイバなどの損失量についてはメーカーのカタログにのっています。

ここまでで予想される伝送損失は全体で-3.2dBm程度ですので、出力から受信まで3.2dBm減衰しても300メートル届くトランシーバモジュールを選定します。
見やすいのでJuniperのサイトから引用させてもらいます。

比較するとMMF ~300m、SMF 10km~ という自分でサンプルに選んでおいて微妙なラインナップですが、EX-XFP-10GE-LRが適正です。
スペックシートの中から重要な項目をいくつか抜き出します。

Fiber count Dual 2芯(Tx/Rx)
Transmitter wavelength 1310 nm Oバンド
Minimum launch power –8.2 dBm 動的な最低出力
Maximum launch power 1 dBm 動的な最大出力
Minimum receiver sensitivity –18 dBm 最低受信レベル
Maximum input power 0.5 dBm 最高受信レベル
Distance 10 km 最大伝送距離

このスペックシートにどう-3.2dBmを反映させるかがキモです。
赤外線の受光素子は人間の目と同様に明るすぎる光は受信できません。
最悪の場合は受光素子が壊れます。
例えるなら人の目で太陽を直視するようなものだとおもってみてください。

近年のトランシーバはこのような一方的な高出力に対して対策がされており、出力側が動的にレーザーの出力を調整します。
スペックシートを見るとわかると思いますが、最大受信可能レベルが0.5dBmに対して、最低出力が-8.2dBmとなっいます。
同一のメーカーであれば、ほぼ送信側の最低出力が受信側の最高出力をうわまらないよう設計されています。
※仮にレーザーが強すぎる場合は、アッテネータという減衰機を利用することでレベルを減衰させることができます。(トランシーバが壊れたら手遅れですが…)

今回の場合だと、出力側の-8.2dBm ~ 1dBm から 3.2dBmを引いたレベルが、受信側の-18dBm ~ 0.5dBmの範囲に収まっているので、トランシーバー間のネゴシエーションによって適切なレベルに調整され、通信できるということになります。

SMFは劣化する
SMFは主な材質として石英が使われています。
時間とともに石英ガラス中の欠陥と、ファイバの被覆等から発生する水素が反応しOH基となります。
このOH基が赤外線を吸収する特性により伝存損失が発生します。
影響される波長は場合により様々ですが、SMFで利用しているバンドは広範囲で多からず少なからず影響を受けます。
特に影響を受けるのが、Eバンド帯の1360nm ~ 1460nmです。

しかし近年ではファイバの技術革新により、水素による伝送損失の影響はほぼないと言っていいレベルまで低減されています。
ただ予想される伝送損失がシビアな場合だと、使ってる最中に僅かなながらでも経年劣化で最低受信強度を下回ってしまうかもしれません。
また古いファイバの場合、世代的に水素劣化への耐性の低いものが使われていたりするかもしれません。

またこの水素劣化の影響は波長ごとに異なるため、実際に使用する波長に対応したパワーメーター(テスター)を用意しないと、問題が発生していることが分かりません。

余談ですが赤外線が吸収や反射される特性が、赤外線分光法という解析方法に利用されています。

パワーメーターを用意する
上記でもさらっと書きましたが、トランシーバを接続したNW機器でもレベルを取得できますが、あくまでファイバーとトランシーバで利用している状態のレベルです。
ファイバ単体で特定の波長での終端同士の純粋な減衰率を計測するためにパワーメーターがあるといいでしょう。

まあ軽くまとめると。

・利用する波長の特性を理解する
・しっかり減衰率を計算する&実際に計測する
・SMFは高価なため距離が長い場合は多重化の検討を

うわ超てきとー!

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